誂え品
壮大なイメージを、カタチに。
工芸と自身のビジョンをどう組み合わせるか。

重松象平
建築家 | 建築設計集団OMAのパートナーおよびニューヨーク事務所代表。1973年福岡県生まれ。九州大学工学部建築学科卒後オランダに渡り、1998年より国際的建築設計集団OMAに所属。2008年よりパートナーとなる。主な作品はコーネル大学建築芸術学部新校舎、ケベック国立美術館新館、メトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートの展覧会デザイン、ニューヨークのサザビーズ本社屋、ロサンゼルスのウィルシャー・シナゴーグの多目的イベント施設、福岡の天神ビジネスセンターなど。現在ニューヨークのニューミュージアム新館、虎ノ門ヒルズステーションタワーなどが進行中。コロンビア大学大学院、ハーヴァード大学デザイン学部大学院などで客員教授を歴任し、2021年より九州大学大学院人間環境学研究院教授、BeCAT(Built Environment Center with Art & Technology)センター長。
多目的な装置は、変容性のある都市のイメージを工芸にまつわる素材で形にしたらどうなるかという思いから着想した、言わば、重松象平氏の建築に対するビジョンを、形にしたものだ。
「都市は、多様なものが混在していて、しかしそこに何らかの関連性がある集合体。都市を形成する建物を‘器’と捉えたとき、その用途は長い時間をかけて変わっていく。建物や都市を、どう使っていくかは人々次第。」
都市のように、建築のように、使う人が自身のクリエイティビティを以て日常で自由に使えるようなもの。抽象的なイメージを極めて無機質な形状で、しかし職人の技が光るような質感を探して、あらゆる素材を扱う職人に会いに行った。




こだわりがある人とのやり取り。
制限がある中で生み出される新たな製法。
建築におけるものづくりのプロセスと、誂えのプロセスに共通点を感じたと重松氏から聞き、驚いた。
誂えでは、個人の「こだわり」を形にするとき、これまでずっと続いていた「伝統的な技法」だけでは立ち行かないことがある。そんなときに、双方の思いがぶつかり合い、化学反応を起こす。建築にも、これまで長い間積み重ねてきた工法があり、ここに建築家のアイディアやデザインがぶつかって、また新しい発想や工法が生まれる。
使い手と作り手の双方の思いや、何らかの制約の中で出すアイディア、実現に向けた検証。自分が試されているような感覚を覚えるが、新たなものが生まれてくる期待が高まる瞬間でもある。
フリーフォーマットと言えるお誂え
突拍子もないアイディアと、作家や職人の技量がぶつかり合う際たるものが「誂えの文化」なのだろう。昔のように誂えが日常であったなら、突然 変異が、日々繰り返し、ものすごい数で行われる。その結果、伝統の中に革新性を生んでいく。テクノロジーによって距離や時間の壁がなくなった現代に、この突然変異の反復を起こすことができれば、ものづくりの未来は変わるかもしれない。


