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クラフツマン

現代だからこそできる工芸の表現

左は古典柄の絵図に、蛍光オレンジと鮮やかな緑を反映させたもの。いい塩梅の抜け感を表現するため、右は文様を少なくし金と蛍光色を入れ替えた。このようにグラフィック上でいくつか検討し、実際にテスト織をしていく。
袈裟等に用いられていた昔の生地のアーカイブが、加地織物にはたくさんある。中には織りの紋図データが残っていない生地も存在する。

服部今日子氏の茶箱において、数寄屋袋·仕覆の生地として製作した西陣織の生地は、古典柄をベースに蛍光糸を織り込むという試みをした。
加地織物に行った際、西陣織の技法で織られたモダンなデザインの生地が、様々なインテリアに応用されたアイテムを見た。その隣では、袈裟などに用いられる豪華絢爛な古典文様が織られている。和装だけと思い込んでいた西陣織に、イノベーションがあることを知り、自身も伝統と現代を掛け合わせたような生地をつくってみたくなったというご希望をいただいた。

工房にアーカイブされていた古典柄から好みのものを選び、現代だからこそ存在する蛍光色の糸を柄に取り入れることにした。製作の過程で、伝統の柄に蛍光糸を使うと非常に、激しい表現になることが分かり、絵柄を間引いたり、配色を変えるなど、繰り返し織りなおした。

不規則な縦の線が、鮮やかな赤色を引き立たせる。陶芸家・加藤丈尋氏は釉薬による美しい色彩を得意とする。服部今日子氏が一目で気に入った赤色は、元来、釉薬に亜鉛を混ぜて色を出す製法をとる。中毒性のある亜鉛は食器·茶椀には用いることができないため、新たに亜鉛を用いずにも鮮やかな赤色を出す方法を開発した。

漆の進化によって、ガラスに蒔絵をできるようになった。ガラスに蒔絵を施す面白さは、透明な素材を挟んで表裏の表現ができる点にある。この特性を生かし、前田育男氏の誂えにおいては、「ワインを注ぎたくなるような有機的なデザインをしてほしい」という要望を下に、蒔絵師・高島新氏はガラス越しに見える朱と表の金蒔絵で表現するメビウスの輪を描いた。動物のしなやかな筋肉とワインを注ぐ様からもインスピレーションを得ているという絵図は、蒔絵特有の立体感と色の変化が美しい逸品だ。


加地織物 | 西陣織
京都の伝統産業である西陣織の中でも金襴と呼ばれる分野で、150年以上前に創業。西陣織の可能性を広めるべくインテリア向けのブランドKYOGOを立ち上げるなど、伝統技術を用いながらモダンなデザインの上質で高級感のある織物を製作する。

丈夫窯 加藤丈尋 | 京焼・清水焼
1968年(昭和43年)京都生まれ。1988年(昭和63年)から丈夫窯で作陶を始める。ヨーロッパやアジアの展覧会にも積極的に作品を出展。釉薬の研究を重ね、「色」の表現にこだわりをもつ。現在、日展会友/京都工芸美術作家協会会員/作家集団工芸京都同人/日工会評議員/創工会会員