クラフツマン
繋いでいく意志

漆器のベースには加工に適した欅が使われることが多い。木地の段階では持っただけで歪むほどの薄さに挽き、生漆をしみ込ませ固めていく。



西村圭功漆工房 | 漆芸
1920年代 初代西村圭功 創業。以後、上塗り専門の塗師として食器・茶道具を製作。当代 三代西村圭功は上塗り仕事に加え、漆器製作の全行程を習得し、職人仕事の他、作家活動も展開。
漆器のベースは木を削って成形したものということをご存知だろうか。京漆器の最高峰である西村圭功漆工房では、全体を均一に0.7mmの薄さで削った木地を用いることにこだわる。一般的な木地は、底に向かって若干厚くなるように挽くことが多い。一方、全体を均一な厚みで挽くことの利点としては、器の中が広くなるということだ。京漆器の大きな需要を締める料亭では、料理を装う際、底の広がりが盛付けのバランスを取る上で非常に重要になのだ。
0.7mmの厚みでつくられた木地は薄すぎて光を通す。持てば歪んでしまう代物だ。この薄く繊細な木地は、幾重もの工程を経て、強固で美しい器になっていく。
西村氏が信頼し共にものづくりを行う挽き物師は高齢で後継者もいない。そのため、無二の技術を継承するために、本来、上塗り専門の西村圭功漆工房では若い職人を雇い、師の下へ修行に出している。
伝統工芸は、先人たちの技術の積み重ねがあり、これを習得した職人が、その上に新たな技術を重ねて、次の代に繋いでいく。技術だけではなく、考えや生き様、美意識という言語化できないものも含めて受け継いでいくのだと思う。途絶えるということは、積み重ねてきた技術以外の大切なことが丸ごと消えてしまうということに等しい。表面的な技術は、仮に復元できたとしても。