クラフツマン
経年変化が美しい塗料

鉄のパーツに漆を焼き付けた。経年変化を楽しむことができる。

精製前の漆は「生漆(きうるし)」と呼ばれ、空気に触れる表面は酸化して褐色になる。

生漆の状態を確認して、攪拌する時間の目途を立てる。

専用の撹拌機に生漆を入れ、不純物を取り、上部から熱を当てて水分を飛ばしていく。

作家・職人の好みに合わせてオーダーメイドで漆を調合する。

漆は木の樹液。樽ごとに色合いも性質も異なるため複数の漆をブレンドして品質を保つ。
TOMO KOIZUMI氏のチェストに用いた引手と脚は、オリジナル製作した鉄のパーツに漆を焼き付けたものだ。漆本来の飴色が美しく、光が当たることで徐々に透明度を増していき、鉄の溶接部が透けて見えてくる景色が面白い。また漆には、自然の殺菌作用があるとされ、手が触れるところに用いることは理にかなっている。
堤浅吉漆商店は、精製を専門的に行う工房だ。漆は樹液そのままでは、塗料として用いることができない。工房には、全国・世界から漆の木の樹液が集まる。一定温度で管理された樹液は、不純物を取り除いた後、熱をかけて攪拌しながら水分を飛ばしていく。昔は、軒先の塀に漆を入れた大きな桶を斜めに立て掛け、日光に当てながら竿のような棒を用いて人力で攪拌していたという。初代は「自分たちが漆をつくらなければ、職人さんたちが仕事することができない」と、自転車に精製した漆を積み市内の職人に届けていた。その意志は今もなお受け継がれ、作家・職人の好みに応じた粘り気になるように複数の漆を調合して届けている。

堤浅吉漆店 堤卓也 | 漆精製・販売
1909年(明治42年)創業。耐候性に優れた高分散漆を開発。国宝・重要文化財修復用途だけでなく、「漆×SURF」「漆×SKATE」「漆×BMX」等、新たな価値観を提案する。2019年パースペクティブを設立し、天然素材「漆」の可能性追求と、植栽の輪を広げる活動を開始。2021年 「日本伝統工芸再生コンテスト」最優秀賞(ロニー賞)受賞。