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フィーチャ

漆器の魅力を分析

塗りの工程では、漆の不純物を取り除くため濾し紙で3回程度、濾す作業を行うが、一滴も無駄にしないよう専用の絞り機を用いる。

日本で採れる漆は、全体消費量の僅か3%。また、植樹してから漆が採れるようになるまで15年の歳月を要する。

一定のリズムで迷いなく、黒漆を塗っていく。

孔雀の羽からつくる、埃を取り除くための道具。上塗り工程では埃が立たないよう相当気を使って進められるが、最後に一つずつ取り除いていく。

漆を硬化させるための部屋・牟呂(むろ)は温度25℃ ·湿度85%の環境に保たれる。漆に含まれる酵素の活動を活発にし、酸化重合を促進するためだ。

新品のときの艶が使っていくうちに段々と落ち着いていく。以前とは異なる陰影の美しさに、ふと気が付く。経年変化が漆器の特徴の一つだ。 漆器の魅力は「実用性」と「変化の美しさ」と言える。実用面で特筆すべきは、軽さと丈夫さ。薄く挽いた木地を漆で塗り固めていくことで、圧倒的な軽さと丈夫さを備えた道具となる。これだけなら昨今の新素材でも実現できるかもしれないが、現代の技術でも真似のできない魅力として、表情の変化が挙げられる。

漆は、漆の木から採取される樹液で、天然の高分子化合物だ。主成分はウルシオールと言われる油で、この油の中に水が分散し、乳液状になったものが漆だ。漆に含まれる酵素が、空気中の水分から酸素を取り込み、酸化重合を促進、硬い皮膜をつくり硬化する。年月を増すごとに、より硬化が進み、表面の数ミクロンの部分において浸透度が増し、塗りたてのときより、光沢が出て色目が美しく育っていく。これが経年変化の理由で、漆は塗布後20年後が最も美しいとも言われる。