過去30年で10分の1に市場が縮小した西陣織。同社は早くから危機感をもたれ、海外マーケットへの展開を模索されてきました。あらゆる用途を模索する中、インテリア市場に目をつけました。それまで、帯幅である32cmの生地を織るのが西陣織のスタンダードでしたが、それではインテリア市場で見向きもされません。世界で唯一、西陣織の技法を用いて150cm幅の織物を織ることのできる機械を開発され、その結果、帯や和小物でのみ使われてきたテキスタイルの可能性を一気に広げることに成功しました。
現在では、1200年の歴史が培った日本を代表するテキスタイルは海外のラグジュアリーブランドからも多く採用されています。
西陣織は、町の7km圏内に20工程の職人が集まりひとつのものづくりを手がけています。同社の取り組みは、この西陣エリアの産業全体を残し、未来に向けて発展させる原動力となっています。
西陣織は世界一複雑な構造をもつ織物といわれています。
均一の糸を織るのではなく、太い糸、平らな糸などさまざまな種類を織り分け、それが最大約25層重なる多層的な構造を持ちます。また、本物の金箔、銀箔などを和紙に貼って、それを細かく裁断し、生地に織り込む技術も、西陣織独自のものです。
それを織物として完成させる工程も特徴的です。 西陣織には、生糸の製造や、糸染めなど細分化された20工程がありそれぞれに、熟練の職人がいます。工程は、すべてを一つの工房内で行うのではなく、西陣の街7km圏内にそれぞれの職人が存在し、街全体で西陣織ができあがっています。職人同士の切磋琢磨がその高いクオリティを守り続けているといえるのです。
インテリア等の生地製造に対応するため、西陣織の技術ではこれまでは帯幅32cmしか織れなかったものを、150cmの広幅で製造できる機械を開発されました。クオリティの高いテキスタイルにより、世界的に評価を得ています。
宝石などで着飾ることがなかった時代、西陣織は云わば最高の装飾品の一つでした。「着るジュエリー」として天皇家、貴族、将軍家らの特注品を手がけることで技術発展していきます。本物の金箔、銀箔などを生地に織り込むという技術が発展したのも、当時のそういった嗜好によるものです。