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CRAFTSMAN

服部一齋 漆芸家

受け継いできた技術は出し惜しみせず、きっちりやる

本物の職人とは、先人の紡いできた技術を習得し、この時代に自身のアレンジを加えて表現することなんだ、と服部さんの一言から気付かされました。蒔絵は、漆の塗膜に蒔かれた金の粒を、粒子レベルで正確に半分に研ぎだせたとき、もっとも輝いて見えるそうです。アスリートのような根気強さ、機械にはできない次元の繊細さを作品から感じます。

服部一齋漆芸家
1975年に京都に生まれる。1998年に国立高岡短期大学専攻科(現富山大学芸術文化学部)を卒業し、1998年に宮崎木材工業株式会社に入社。2001年に服部峻昇に指示し、2018年に独立。2019年に工芸美術日工会展日工会賞受賞。全関西美術展第一席を受賞。工芸美術創工会展にて京都府知事賞受賞。

漆芸・蒔絵

漆で絵やパターン、文字を描き、その漆が乾かないうちに粉状の金粉や銀粉を蒔いて、表面に定着させ磨く加飾技法のひとつ。日本で花開いた技法です。奈良時代に確立されたと云われ、日本では質の高い漆の生産がされていたこと、また、漆は湿度で乾く性質で日本の気候風土が、細かな蒔絵を行うのにも影響したと考えられます。
  
現存する最古の逸品は、聖武天皇への献納品、正倉院に残る「金銀鈿荘唐大刀」(きんぎんでんかざりのからたち)。『国宝珍宝帳』という献納リストには、装飾について『末金鏤作』と記され、末金つまり金を粉状にしたものを鏤める(ちりばめる)と技法の解説がされています。江戸時代初期の芸術家・本阿弥光悦は、金蒔絵に金銀貝、青貝などを配した光悦蒔絵と呼ばれる後世にもインパクトを与えた表現を行うなど、1500年間、進化をし続ける日本固有の漆芸技法です。
  
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  • 高蒔絵は、模様の部分を漆とレリーフ状に盛り上げ、金・銀粉を蒔く技法です。漆で描いた部分に金粉を蒔き、漆を高く盛る土台をつくります。

  • 黒い所に描く時に細部までよく見えるように、一層目は赤漆で描きます。

  • 一層目の文様に細かい銀粉を蒔き、乾くまで一定期間置き、さらにその上に黒漆でより高く盛り上げていきます。

  • 漆芸には蒔絵や螺鈿と言った技法も含めて、あらゆる表現技があります。こちらは、木目の美しさを生かす透漆塗り(すきうるしぬり)を応用し、漆のあめ色を白地によって引き立たせ、部分的に金箔をあしらって表現をしています。