明治時代から5代続く西陣織の織元。自社の工房で織物を制作するほか、近年は、染めの着物や精密な刺繍によるオリジナル作品を手がけるなど、和装美を追求し極めた技術を用いて、常に時代が求めるデザインの織物を生み出しています。
明治時代、日本画家尾竹竹坡によって描かれた帯の図案。『日本画の柔らかい表現を織物で再現する』という発想から、世界的にも類を見ない高度な織の技術が発展していきました。
手機にかけられた経糸(たていと)1,200本。乾燥によって糸が切れやすくなるため、湿度を一定に保つ目的で昔は埋機(うめばた)といい地面の上に織機を設置する工夫がされていました。加納幸では今もこれを再現し、織物を製作しています。
他の職人技術と同様、織り手の仕事は「見て覚える」世界。加納幸で腕を振るう若い職人は、「技術を残していきたい」という思いから、年配の職人から伝承された技術を、言語化していらっしゃいます。
「立体的に織らなければ織物である意味がない」という哲学のもと、独自の表現に挑戦されています。この王朝レースという作品ではフランス王朝時代のレースを生地表面に貼り付けたかのような立体感の演出が見られます。
Photo: Kanoko