かつて桶は日常生活の必需品として、どの家庭でも使われていました。プラスチック製品の普及と共に需要は激変しますが、京都においては茶席や高級料亭で上品さや丁寧さを演出し、尚且つ実用的な道具として、より技術が洗練されていくことになります。近藤太一さんはそうした歴史背景を大切に、先人が紡いできた技術を後世にも繋ぐ洗練された道具を生み出しています。
木工品の中でも桶は「おひつ」や「湯桶」など、常に水に濡れたり乾いたりする過酷な環境で使われてきた道具です。桶製作の全ての工程において、木の特性を熟知した仕事を施しています。木目や木肌の整った桶は、木の美しさを引き出すと共に道具としての強さも兼ね備える、木の工芸の際たるものといえます。
木は道具になった後も生きている「自然の素材」のため、使ううちに歪みが生じ、木のピースを留めているタガが緩んできます。しかし、職人の手により、木のピースを調整し、タガの締め直しをすれば繰り返し使うことのできる、自然と共存し、ものを大切に使い続ける日本の美意識が凝縮された道具です。
桶づくりの木材は半年かけて雨風にさらし、鍛えて、道具になったときに木が伸び縮みしないような工夫をしています。職人曰く、「材料が若いうちは狂いやすい、だから、わざと過酷な環境において鍛えておいてぶれないようにする」
「正直型」*を用いて型と木のピースが隙間なくピッタリ合うように正確に削ります。光に透かしながら、光を漏らさないように削り合わせます。
*正直型は桶のサイズに合わせて作った円の中心に角度を合わせてピースの側面を削る角度を定めた道具
ピースを、タガを使って組み立てていきます。一本の杉から切り出したピースでも、色が赤っぽいのもや黄色っぽいもの、年輪の目の細かいもの、粗いものなど様々。職人は、なるべく似たピースを寄せて組み立てます。そうすることで、見た目の美しさだけではなく、桶が長年使われたときに狂いが出にくくなります。
オーガナイザーはドリンクホルダーに入れる為に、通常の桶よりも勾配がきつく細長い設計になっています。そのため、桶の丸みが上下でかなり異なることから5~6種類の丸みの異なる鉋を使用して削っていきます。
手の入らない内側は、金槌の柄に刃を仕込んだ手製の鉋(かんな)で削っていきます。こうした丁寧な削る仕事により、京桶の特徴である上口が薄く、そこに向かってなだらかに分厚くなっていく形が生み出されます。
修行時代から10年以上かけて集めたという桶作りの道具。江戸の頃のものもあるそうです。仕事をしながら、その時に使う道具を調整し使います。古い道具は「狂いにくい」良さがあります。
中にはこんなに小さなカンナも・・・