bag

CRAFTSMAN

堤淺吉漆店 漆精製

自然とのバランスを感じながら漆を育てる

漆=漆器、蒔絵、高級品でセンシティブ、といったイメージが先行していますが、それはひとつの側面で先入観でしかありません。木の樹液からつくられる塗料・漆は、自然素材でサスティナビリティを求める現代のライフスタイルには最適なもので、抗菌作用があり、紫外線で分解可能なエコ塗料。漆の自給率は3%と危機的な状況に、今、堤さんを中心に京都でも漆の植栽を初めています。

堤淺吉漆店 堤卓也株式会社堤淺吉漆店 専務取締役
1978年生まれ。1998年北海道大学農学部入学。大学卒業後、養鶏会社へ入社、札幌へ。光琳漆の開発を機に、忙しくなった家業を手伝う為、2004年頃から堤淺吉漆店へ。現在、工場にて漆の精製をされています。そして、漆の持つ可能性や魅力を伝える取り組みを積極的にされています。
www.urushinoippo.com
  
堤淺吉漆店
明治42年の創業。1999年、高分散精製法により、漆の弱点である紫外線の劣化を軽減させる新しい漆「光琳」を開発。2004年、国産漆「光琳」が国宝・重要文化財建造物の修復に採用。2005年、「光琳漆」を商標登録。

漆とは

ウルシの木の幹から採取した樹液、もしくはそれを精製したもの。塗料・接着剤としての役割を果たします。漆を塗った縄文時代の副葬品が発見される程、堅牢性、耐久性に優れています。樹液の主成分であるウルシオールが酸化し固まることで、酸、アルカリ、アルコールに強い、優れた機能を発揮。耐久、耐水、断熱、防腐性が非常に高く、今も漆に勝る合成塗料は開発されていないと云われています。

  • 漆の木から樹液を採取することを「漆掻き」といいます。漆の木に刃物で傷をつけると、木は傷の修復をしようと樹液を傷口に流します。それを職人がヘラで集めていき漆の原料が採取されます。

  • こちらはヒコバエ(孫生え、若芽)。10年~15年の成木から牛乳瓶1本分ほどしか採取出来ないそうです。

  • 国産漆の産地は岩手、茨城、栃木など。堤淺吉漆店では貴重な国産漆を一年中大型冷蔵庫の中で恒温管理し、常に新鮮な状態で原料を保てるよう品質管理を行っています。

  • 荒味漆と呼ばれる産地から届いた樹液の状態から、木屑を取りのぞきクロメ鉢と言われる攪拌機へ。

  • クロメ鉢では、熱をかけて水分を飛ばす「クロメ」と漆を練る「ナヤシ」を同時に行って漆を精製します。鉢が導入される前は、桶を斜めに立てかけ、日光にさらしながら人の手で攪拌していました。

  • これでようやく、塗料としての漆のベースが完成します。木は一本ずつ個体差があるため精製も、都度、荒味漆の状態を見ながら調整していきます。

  • 精製した漆をガラス板の上で硬化させ、艶、乾燥時間、透け具合、粘度といった漆の個性を確認してデータベース化。お客様の要望に合わせて数種類の精製漆を調合します。

  • 長年使われてきた判子には、漆の乾きの個性分類する「早いめ」「遅いめ」などニュアンス的なものも。環境や気候によって大きく左右される漆の状態は数値的な何かで測るのがいかに難しいかが伝わります。

Photo:
Terminal81Film Naoki Miyashita | 漆掻き、ヒコバエ、漆の貯蔵風景、ガラスの上で漆を確認するシーン