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イベントレポート

各地で開催されたKiwakotoのイベントレポート

文化朝活第一回

初めに。文化朝活は予め答えがあるものではなく、Kiwakotoスタッフが日々活動する中で「興味深い!伝えたい!」と感じたことを、セッションにご参加いただく皆さまと共に学び・議論し、各々が何等か「きっかけ」を持ち帰っていただく活動です。そのため、これからレポートする内容は会場にいた一筆者の一つの捉え方としてお読みいただけましたら幸いです。

文化朝活第一回
  
テーマ:  
日本のクルマ文化の起源を探求する
  
概要:  
旧車の王様とも言われるトヨタ2000GTの実車をKiwakoto本店内に展示。モータージャーナリスト西川淳さんをプレゼンターに迎え、2000GTをじっくり見ながら、ここから始まる日本のクルマ文化について語らうイベントです。 
  
プレゼンター紹介:  
西川淳 モータージャーナリスト  
1965年 奈良県生まれ。京都大学工学部卒業。リクルート・カーセンサー副編集長を経て、99年に独立し編集プロダクションを設立。フリーランスとして雑誌、新聞、ネットメディアに多数寄稿する。専門はラグジュアリーカー、ヴィンテージカー、スーパースポーツ。自動車の歴史と文化を語りつつ、産業と文明を批評する
  
トヨタ2000GT:
1969年式 後期型

  
文化朝活一回目ということで、まずは―

  

文化とは?

  
文化と聞いて、何を連想するでしょうか。
・歴史、過去
・教養
・哲学、アート
・生活、営み
・そこにいる人にとっては普通のこと
・一定の領域中で共有している価値観
等々
「京都って文化があるよね」とは、京都の人が長い歴史の中で育んできた当たり前の生活を、よその人が見たときに「特殊」と感じ「文化」的と捉えた。そしてモノとしての形があるのではなく精神的なこと、と定義ができそうです。
  
トヨタ2000GTと西川淳氏

  

本題「日本のクルマ文化の起源」トヨタ2000GTを囲んで

今回プレゼンターとして甚大なご協力をいただきました西川淳さんが選ばれたのがトヨタ2000GT。なんと、群馬に住むカーオーナーさんからお借りいただき、西川さん自身で570kmを自走、前夜の20時半、Kiwakoto本店に7時間かけて到着されました。もう、それだけで拍手喝采です!
  
2000GTはトヨタ自動車工業とヤマハ発動機が共同開発し、ヤマハ発動機への生産委託で1967年から1970年までトヨタブランドで生産された、スポーツカーです。
“欧州で初めて高く評価された日本のスポーツカー”といわれる個体を、敢えてこの日のために選んでいただきました。
  
GQ JAPANに、西川淳さんの連載「西川 淳のやってみたいクルマ趣味、究極のチャレンジ」にて、トヨタ2000GTがKiwakoto本店に車で到着するまでのストーリーが語られています!併せてご覧ください。
https://www.gqjapan.jp/cars/article/20200301-toyota-2000gt

  

文明の利器が作り上げたモノ=クルマ
    ― なぜ、文化的に感じられるのか

テーマは「日本のクルマ文化の起源」ですが、前述のように文化とはモノではなく、ある領域の中でずっとはぐくまれてきたコト、スタイル。
そもそも最高の工業製品であるクルマを題材に「文化」を語ることはできるのでしょうか。会場に集まった方々も私たちも、なんとなくクルマを文化的と感じています。
理由を問うと、
・人とのつながりを生む
・クルマそのものの芸術性、美しさ
・自己表現をするファッションの一部
おそらく広く一般の方には理解されないクルマの愉しみ方をしている、もしくは提案している、という一種の領域性を発見しました。
  
トヨタ2000GTの内装
  
そもそもクルマの存在理由に立ち戻ってみると「人と荷物を長距離、且つ、馬よりも速く運ぶこと」「A地点からB地点を効率的に速く行くための道具」です。この原理原則に基づき、日本では精鋭たちの手により圧倒的に優れた工業製品として研ぎ澄まされ、実用性が高く、コスパの良いクルマが生産されています。多くの人がクルマの益を享受できる世の中になり、自動車産業は国の基幹産業として成長しました。
  
しかしクルマ好きたちは、
どことなく居心地の悪さを感じている―
  
クルマがライフスタイルの一部である私たちは、文明の利器というよりは、やはり文化として、精神的な充足としてクルマを捉えていて、A地点からB地点に「至る」プロセスを愉しみたい。実用的かどうかという次元からかけ離れたスタイルを愉しみたいと切望しています。
  
他にもモノを文化的と捉える事例があります。歴史的な建造物、社寺仏閣など古い建築物は、一般的にも文化として捉えることが多いと思われます。これらも建築された当時は、最先端の技術を以てつくられた文明の利器。時間を経て、文化になったと言えます。
  
西川淳氏とイベントの様子
  

  

文化になり得るために必要な要素は

  
冒頭「文化から連想する言葉」にも挙げましたが、歴史や長い長い時間の経過が、人が‘それ’を文化的に捉えられるか否かの、要素の一つなのかもしれません。日本車の歴史は戦後70年。固有文化で形のある、例えば社寺仏閣や和装と比較すると圧倒的に新しい存在です。もしかするとクルマを運転しない時代に突入したら現代の‘クルマを運転するスタイル’が文化的になり、乗馬のように高貴な趣味として捉えられるのかもしれません。
  
そしてもう一つの要素が「オリジナリティ」。ご存知のようにクルマはヨーロッパで生まれ、アメリカで大量生産としてリメイクされ、世界に広がりました。日本は超後発。オリジナリティがないのは仕方がない。ただ、トヨタ2000GTは欧州で高い評価を得ました。当然、様々な理由があり断定はできないと思いますが、伝統工芸と似ているところがあるのでは―。

  

改めて、トヨタ2000GTのオリジナリティとは

東の果てたる島国に南蛮、インド、中国から多くの文明・技術が伝来し閉鎖的地でガラパゴス的な進化の道を歩み、あたかも日本のDNAに元来あったかのようにこの地の人たちによって咀嚼された結果、
新たな技術・表現を見出し、後世に受け継がれていく「日本(固有)の伝統工芸」になりました。漆芸、織物、陶芸、象嵌や七宝といった金工、全て然り。
  
トヨタ2000GTは、‘日本にも本格的なスポーツカーが欲しい’と、1960年代に様々なヨーロッパのスポーツカーのいい要素を取り寄せて「模倣車」としてつくられたとされています。きっと、ミックスによって生み出されたプロダクトの完成度が異常に高かったのでしょう。いいところを咀嚼して、自分のものとしてアップデートし表現する日本の『オリジナリティ』の賜物だったと感じます。
  
トヨタ2000GT
  
そんなトヨタ2000GTも、出た当時は日本で初めて一般発売された最新の本格的スポーツカー。後続車種が続々と出てくる中、最新のスポーツカーはより新しい個体と入れ替わり、忘れ去られ、捨てられていく。発売から20年、30年経ち、ふと‘トヨタ2000GTの存在って大事だよね’と誰かが気付き、改めて価値が見いだされることになります。クルマが、コンピューターや電子制御で実用的なものに突き進んでいくなかで、「古いものって大事だよね」と思う人が現れて、実用から離れた別次元の価値を見出した、と解釈できます。
  
イベント時の店舗の様子
  

  

第一回の文化朝活を終えて

「当時の作り手の思いがプロダクトに表れている。作り手の顔が必ずしも見える必要はないのだけれど、その思いをプロダクトを介して受け取ることができ、腑におちる」個体だったからこそ、日本にトヨタ2000GTがあってよかったと思う人が出てきたのではないかと思う、と最後に西川さんはおっしゃっていました。
  
人は人の思いに動かされ「伝えたい、残したい」と強く思う。この思いの起点が『文化の起点』と今回のセッションを通じて改めて感じました。私が素晴らしいと思った瞬間が文化の生まれる可能性の『点』です。
  
  
今回準備にご協力頂きました皆さま、当日のセッションでたくさんヒントをご提供いただいたご参加者の皆さまへ、大変に感謝いたします。ありがとうございます。
  
企画主催
Kiwakoto produced by A-STORY Inc.
  

佐藤愛

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