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パートナー対談

作り手の思い・考え方こそ未来へ残したい!Kiwakotoメンバーと開発パートナーとの対談です。

古くから残ってきたものに「美」を学ぶ

吉羽政人(三代目吉羽與兵衛)×吉村(Kiwakotoディレクター)

吉羽政人
京釜(茶釜製作)株式会社吉羽與兵衛 代表取締役社長
千家十職の釜師から別家を許され、與兵衛の号で独立して三代目。伝統の京釜作りを守り続けています。

吉羽與兵衛氏との対談写真

今回対談させていただく、吉羽政人さんは、江戸時代の茶釜の修理を受けられていると思いきや、鋳造の技術を応用しワインホルダーを作るなど、伝統を受け継ぎつつも挑戦を日々されています。
打合せのため工房に伺うと、茶を点ててもてなしていただき、鉄を鍛える「カン、カン、カン」というリズミカルな音と共に、安らぎの時間を過ごさせていただいています。初代吉羽與兵衛・政人さんのおじい様は、丁稚奉公として千家十職の釜師・大西家に入り、実力を見出されて別家・独立されたという経歴の人物。千家十職とは、茶道に関わり三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)に出入りする塗り師・指物師など、千家好みの茶道具を作ることのできる限られた職人たちのこと。そんな大西家から独立をするということは、確立された世界から一歩外に出て、ベンチャー精神で常に新しいこと、他とは違うことを追求する宿命を背負ったということなのかもしれません。そのおじい様の精神を受け継ぐ、政人さんと改めて「茶釜という道具とは何か」について、話す中で、職人としての思いや考え方が垣間見えました。

吉村:
今日はありがとうございます。野点セット、ようやく完成しましたね。茶釜の入ったポータブルなお茶のセット、というコンセプトから、茶釜の形状を作り出すのに非常にご苦労をかけたと思います。

吉羽:
約一年かかりましたかね。実は兼ねてから、もっと気軽な茶釜はできないか、と自分の頭の中にあったものですから、今回このような形で一緒に作ることができ、とても満足しています。

吉村:
茶釜の雰囲気を残しつつ、現代にもフィットする「形」について打合せしている際、吉羽さんは真っ先に、昔の茶道具の資料を持ってこられました。千利休やそのお弟子さんたちの多くの作品が掲載されていたものです。三宅デザイナーやスタッフもそれを見て、議論がぐっと深まったのが印象深かったのですが、何故、あの資料を持ち出されたのですか?

吉羽:
長く時代を超えて残ってきたものって、誰かが「すばらしい、残したい」と思ったからこそ、大事にされ受け継がれてきたと感じます。すなわち、淘汰され、それでも残り続けてきた、普遍的な美しさがあるのだと。

吉村:
確かに・・・。作られた後、いろいろなものが出てきても、残り続けたということですよね。

吉羽:
たとえば、縄文土器の火焔型土器なんて、よくあんな形状を当時の人々が思い至ったな、と感銘を受けます。この発想力は不思議でなりませんし、自然と見入ってしまいます。古いものにこそ、時代を超えて人が美しいと思う何かがそこにある、と捕らえ、いつも勉強させてもらっています。

ポータルな茶釜

吉村:
今回の茶釜は茶釜らしい形状と美しさを残すために、千利休のお孫さん・千宗旦が手掛けた「四方口釜(よほうぐちがま)」をヒントに丸と四角を組み合わせた形に至りました。私も、今回初めて知ったのですが、元来、茶釜は大きいほうが好まれていたそうですね?

吉羽:
昔は、男性しか茶道はできなかったので、茶釜は特に男らしさを表すような道具でした。お茶を恭しくいただく、大きく存在感のある道具なのです。野点ということで、小さく形を変えましたが、特徴的な形状によって、存在感を強調できましたね。

道具は思考を表現するもの

吉村:
茶釜やその他の茶道具、私もそうですが馴染みのない方のほうが多くなっていますよね。茶道の作法は何のためにあるのかなと、ふと思うときもあります。

吉羽:
中国から日本にお茶が入ってきた時代は、お茶は薬草で、非常に高価なものだったそうです。貴重なものだから大切にする。特別なときに、特別なルールに則っていただく。そんな姿勢から、道具や作法が発展していったのだと思います。お茶の葉を運ぶ際も、茶壷に入れ封印をして、籠で運んでいました。高貴な位の方の部屋、書院造をイメージしていただければ、広く重厚感のあるつくりですよね。そこで、仰々しくお茶をいただくのですから、必然的に、存在感のある茶釜が好まれていったのです。今の時代に置き換えれば、高価なワインをいただく際はデキャンタに移し専用のグラスで、それにはお洒落をして美味しいレストランでゆっくりと…といったのと似ていますかね。

吉村:
セレモニーなんですね。

吉羽:
そうですね。お茶会などは、亭主が何か月もかけて道具を選び、お出しするお菓子や料理、器を吟味し、客は亭主の意をくみ、何を着ていこうかと思案する。その時点でお互いにお茶会を楽しんでいますよね。作法をきっちり守ることに重きを置くのだけではなく、なんでこういうルールができたのか意味を理解しながらゆっくりとした時間を楽しんでみても面白いと思います。そんな体験を提供する道具を作り続けていきたいです。

吉村:
なんでも手軽に楽しめるようになりましたが、わざわざ道具を揃え、ふさわしい格好をして時を過ごす、というのは非常に贅沢なことですよね。吉羽さん、今度は茶会も企画しましょう!今日は貴重なお時間、ありがとうございました。

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