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パートナー対談

作り手の思い・考え方こそ未来へ残したい!Kiwakotoメンバーと開発パートナーとの対談です。

「可視化された空力」が生まれた理由

西川淳(モータージャーナリスト)×宮部修平(NEGRONIディレクター)×吉村優(Kiwakotoディレクター)

KiwakotoとNEGRONI初めてのコラボレーションを記念し、Kiwakotoディレクター吉村とNEGRONIディレクター宮部修平氏、そして仲人をしてくれたモータージャーナリストの西川淳氏によるトークイベントを催しました。その一部分、開発ストーリーをお届けいたします。

西川淳氏(モータージャーナリスト)と宮部修平氏(NEGRONIディレクター)

宮部:
実は、今回のコラボレーションに際して、京都の数千年の歴史の上に成り立っている「なにか」を取り入れて商品をつくるにあたり、自分の中で「これでなくてはダメ」というものを見出した上でスタートを切りたかったのです。
  
京都に来た初日、ディレクターの吉村さんと、さまざまな「素材」を見に行きましたが、その時点ではあまりピンと来るものがなくて。すばらしい素材や模様はたくさんあったのですが、そのままドライビングシューズとしてぱっと商品に取り入れるのには違和感がありました。「なぜ、ドライビングシューズに用いるのか」が自分の中では見出せなかったのです。そんなこともあり急遽、薗部染工さんの工房を見せていただくお願いをしました。

墨流し染めの作業風景

墨流しは、顔料を水に垂らして線を描くように柄を描くのですが、最もカルチャーショックだったのが反物を水面に付けて、外すまでのスピードと息の合った作業です。自分の想定ではじっくりと水に浸して、色が定着するまで待つといった勝手なイメージをしていたので。その動きを見ているときに、ある種、カメラのシャッターを切る瞬間のようだなと感じました。
一瞬の動きで、水面の模様を写し取る様を見ている間に、流体力学の実験を思い起こしました。流体つまり、水や空気の流れには法則があり、「一回どこかに入ったら必ず出なくてはならない」というルールで動いています。その一瞬の流れは通常、目視では認識できず写真として記録することで、可視化されます。墨流しの作業プロセスは、流体の動きを最も写真に近い形で切り取ることができるものだ、と思ったとき、今回のコラボレーションのテーマが生まれました。

吉村:
宮部さんが、「流体を表現したいです」、とおっしゃりクルマの風洞実験で用いられるエアロダイナミクスの絵を見せていただいたときやっと、私も表現したいものの共通認識がもてました。クルマのボディデザインもこの流体力学からエアロマネジメントを行い空気抵抗をコントロールしているそうです。その空気の流れる様と、墨流しの水の流れを写し取る様がシンクロした瞬間でした。
この切り取るというのは、Kiwakotoにとっても刺激的なアイディアでした。私たちは初めて墨流しに出会ったとき、「どんどん変化していく水面の模様の美しさ」に魅了されてなんとかこのプロセスを伝えたいと思ってプロダクト開発をしていました。宮部さんはその中でも、「一瞬で切り取る」という点に着目していただけた。その視点は私たちの中になかったので、驚きましたし、コラボレーションの醍醐味だと思いました。

Kiwakotoの墨流し商品

西川:
実は、昨年(2018年)KYOTOGRAPHIEでKiwakotoに初めて出会いました。ブルーの墨流しがとても気に入ってトートバッグを購入したのですが、その際も、何個もバッグを並べて、びっくりしましたよ。本当にひとつずつ別モノ! 白が多い少ない、柄の流れが戻ってきているとことがある、ブルーの色合い・・・無二とはこのことだな、と選ぶのが楽しかったです。

吉村:
西川さんには、ブランド立上げ当初からいろいろ応援していただき感謝しています。今回のコラボレーションも西川さんなしでは実現しなかった。お忙しい宮部さんとなかなか接点が持てなくて諦めていたところ、西川さんがネグローニのご愛用者だと知り、ご相談したところすぐにつないでいただけて。
宮部さんのことも、私のことも知っていただいていたから、早かったですよね。

墨流しのレザーからのパーツ取り

宮部:
僕もいろいろなコラボレーションをしていますが、やはりスタートの時点でお互いが納得できるものがないと、どこかで不具合が出てくる。今回は最初に、水や空気の流れ、流体力学、一瞬を切り取るというキーワードが出てきて「可視化された空力」というテーマを見出せたこともあり、あとはいかに、商品に表現するかという観点でつくりこみができました。
実際は、この革はドライビングシューズに仕上げていくのが異様に大変で。不規則な柄を用いながら、シューズの正面から後ろにかけて流線が抜けていく様を表すのに、パーツ取りの工程は最も苦労します。結局人には任せることができず、全て自分でパーツ取りは行いました。

西川:
ベントレーやロールスロイスのウッドパネルと似ていますね。職人たちが、木材の持つ本来の美しさである木目を生かした塗装で仕上げ、さらにその柄をそろえていく。ランボルギーニやマクラーレン、ブガッティが提供するフルカーボンボディはセンターを軸に左右対称になるように織柄を合わせていく。職人のこだわりというか狂気に近いですよね。
ちなみに、宮部さんとしては、どうなっているのが今回のシューズでいうとベストな状態?

宮部:
前述のように、シューズのフォルムに沿って後ろに抜ける流れが見えるということ、また、流れているだけでは退屈でたまに渦があったり島のような模様がポツンと出たり、そういう遊びが発見できるとうれしいですね。

吉村:
何回も革を染めていただいていると、これは柄といっていいのか、染め損じとしたほうがいいのか・・・とても悩ましいところもありますが、お二人がおっしゃっていただいているように、「自分としてのお気に入り」を見出すことができるのが、この素材の魅力だと考えています。よく、宮部さんも、「なかなか(恐れ多くて)自分ひとりで京都の伝統工芸の門をたたいてみようとは思わない」とおっしゃいますが、一方で、数千年・数百年と繋いできた技術・表現をどう捉えて再編するか、というのはこれまでとは異なる目、切り口がいる場合も多くあります。Kiwakoto自身や、今回のように色んな領域のプロフェショナルにかかわっていただくことで、より意味深いコラボレーションが生まれるはず。この一回に終わらず、また新たな切り口で一緒に商品開発をしていきたいですね!

プロフィール
西川淳 モータージャーナリスト
1965年 奈良県生まれ。京都大学工学部卒業。(株)リクルート・カーセンサー副編集長を経て、99年に独立し編集プロダクションを設立。フリーランスとして雑誌、新聞、ネットメディアに多数寄稿する。専門はラグジュアリィカー、ヴィンテージカー、スーパースポーツ。自動車の歴史と文化を語りつつ、産業と文明を批評する。
  
宮部修平 NEGRONIディレクター
1984年 東京生まれ。雑誌編集の現場を経て、25歳で実家が経営する製靴会社マルミツに入社。靴のデザイン、製作に関わり始める。ブランドディレクターに就任した2015年以降、英国で開催されるモータースポーツの祭典“GOODWOOD FESTIVAL OF SPEED”、“ GOODWOOD REVIVAL”に毎年出店し、各国の自動車メーカー、愛好家から圧倒的な支持を得る。
  
吉村優 Kiwakotoディレクター
経営コンサル、新規サービスの立ち上げ等を経験。京都出身ながら学生時代に沖縄の方から京都の伝統工芸のすばらしさを教えられ衝撃を受けたことから、いつか職人や伝統工芸に関わるビジネスをしたいと考えKiwakotoブランドの立上げに至る。

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