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皆様の愛着の逸品や、お誂えいただいた逸品にまつわるストーリーをご紹介します。
工程が多く、漆の乾き具合によっても進みがかわる漆芸。そのため記録に残すのは、日々ものづくりをしているKiwakotoでも至難の業です。漆芸家 服部一齋さんにご協力を得て、製作プロセスを記録することに成功しました!
その一部をご紹介いたします。
①漆はもともと、透明ではなく茶褐色のため、白を混ぜても「真っ白」を表現することはできません。そのため、漆芸の「真っ白」は、卵殻を使い表現します。殻を適切なサイズに砕き、漆を接着剤にして、根気強く敷き詰めていきます。
②卵殻を貼り付けた漆が乾いたら、卵殻の厚みになるまで何度も(水色の)漆を塗っては乾かしを繰り返し凹凸を埋めていきます。
③卵殻の厚みと水色の漆がフラットになるまで炭を使って研いでいきます。フラットというのが重要で、研ぎすぎてはいけません。
④整えられた鮮やかな「白」の上に、文字を蒔絵(まきえ)で入れていきます。蒔絵とは、金粉等を蒔いて文様を表す技法です。まず、蒔絵部分のトレース(専門用語で置目)を行います。
⑤今回は蒔絵の中でも、物理的に盛り上げる「高蒔絵」の技法を用い強調します。蒔絵部分を漆で盛り上げます。
⑥漆が乾かないうちに、粉筒に入れた金粉を蒔きます。
⑦蒔いた金粉を朱漆で固め、乾かします。
⑧固めた朱の部分の金粉を炭で研ぎ、金の光沢を出します。
⑨細かい金粉の蒔絵部分を朱漆で描きます。
⑩漆が乾かないうちに金粉を蒔き、乾いたら、漆を吸い込ませて磨きます。これを繰り返して完成です。
細部に神は宿る
漆芸をはじめとする伝統技法の工程を見るたびに思い起こす言葉です。
語源の由来は諸説あるようですが、元々はドイツの美術家や建築家から生まれた言葉です。「ディテール(細部)にこだわった丁寧な作品には作者の強い思いが込められており、まるで神が命を宿したかのごとく不朽の作品として生き続ける」、「本当に素晴らしい技術やこだわりは目に見えにくいことの例え」などと解釈します。
いずれの説明も腹落ちします。
つくる工程は、誰かに見せながら行うものではありません。端折ったとしても、完成品を見る多くの人はおそらく分かりません。しかし、「思い」や「こだわり」といった形にできないものや、言語化できないものは、「神化」の如く宿り、作品を介して受け手に伝わります。その結果、大切にされる逸品になるのだと、思います。
Kiwakoto本店
TEL 075(212)0500
E-mail info@kiwakoto.com
ご興味のある方はお気軽にお問合せください。
エクステリアに装飾を施す。ステッカーであれ塗装であれ、いずれは日光に負け劣化していくものです。
1957年にその原型が作り出された「セブン」は、不易流行のスポーツカーとして愛されるケータハム・スーパーセブン。必要不可欠なもの以外は完全に取り払われている個体は、剝き出しの鉄がエンジンの熱で高温になる代物です。
ここに、どのように工芸を落とし込むか。カーライフを楽しむオーナー様に、「ケータハムでやってみる?」と仰っていただけたことに、とても感謝とプレッシャーを感じました。
基本的に伝統工芸に使われる素材は耐候性が強いわけではないため、メンテナンスをしながら長く使っていくもの。その原点に立ち返り、経年の変化を楽しむことができ、メンテナンスしやすい装飾をご提案いたしました。
協力いただいたのが、堤浅吉漆商店の堤卓也さん。以前から、スケートボードや自転車に漆を施し、新たな漆の活用を提案されていらっしゃいます。
金属に漆塗を施した質感が美しく、また「白檀塗り」といわれる、箔で描いた文様を漆でコーティングする技法を用いました。日光により漆の塗膜が破壊された場合には塗り重ねてメンテナンスすることができるものです。
サイドミラー、バッグミラーを漆でコーティングし、強度を担保するため熱をかけて焼き付けを行います。
伝統工芸では市松模様、クルマの世界ではチェッカーフラッグを装飾のモチーフに。
「究極のドライビングプレジャー」のメッセージと躍動感のあるフラッグ。白檀塗は箔と漆の陰影による表現のため、このような線画でオーナー様とイメージのすり合わせを行っていきます。
木の樹液である漆。乾いた際の濃度や透明感は、季節によっても変わります。また日光に当たることで、透明度が増していき変化を楽しむことができます。
ロールバーは、オリジナルの塗装を剥がし、琥珀色の漆のコーティングの中に金属の肌感を感じる風合いにしました。
オーナー様に関連のある「富士山」と波しぶき。
クルマに求めることは人それぞれ。走る楽しさを追求する一台に、世話をしながら変化を楽しむ自分だけのエクステリアを。メンテナンス、お待ちしております!
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